新規就農応援事業
新規就農応援事業の実施概要
特集2参入者を受け入れ、村上牛守る(新潟県村上市・漆間平さん)
新潟県村上市。県最北部のJAにいがた岩船の管内は、肉質の良さで知られる「村上牛」の産地だ。
漆間平さん(61)は、88頭を飼う肥育農家。畜産の分野で職を求める人や就農を目指す研修生を積極的に受け入れている。
村上牛は、黒毛和牛のブランド。村上市などで約20カ月飼育し、格付等級がA-4、B-4以上のものを認定している。過去に2回、全国肉用牛共励会で最高位の名誉賞を獲得し、肉質には定評があるという。
現在、37戸の生産者が約750頭を肥育するものの、「出荷頭数が減り続けているのが悩みだ」と漆間さんは打ち明ける。生産者が高齢化したことで、肥育を続けられない人が増えているためだ。
そこで漆間さんは、畜産の分野で職を求める人の雇用を支援する国や県の事業などを活用。平成23年度までの2年間は50代の女性を、25年度も11月から30代の男性を受け入れている。
一方、24年度はJAの紹介で新規就農応援事業を利用し、別の30代男性の研修を受け入れた。
牛への餌の給与や畜舎の清掃、堆肥づくり、牧草の収穫など、和牛肥育に必要な作業を、すべて体験しながら学んでもらった。
また、助成金を旅費の一部にし、子牛を仕入れる山形県の家畜市場や、牛をと畜して枝肉にする新潟市の食肉センター、東京都で開かれた共励会を見学する機会などを設けたという。
「これからの産地を支えるのは若い後継者。見聞を広めてもらいたい」(漆間さん)と、思ったためだ。
労災保険や研修用車両の任意保険料金にも助成金を使い、作業に不慣れな研修生が安心して作業できる環境も整えた。
村上牛はこれまで、生産者やJA、販売店などが協力してブランド化してきた。
漆間さんが、村上牛の肥育で後に続く人たちにいつも言うのも”地道な努力”と”支えあうこと”の大切さだ。
「餌や畜舎の環境など、牛の肥育は少しの積み重ねが大きな肉質の差になる。
それ以前に牛は人のサポートがあって初めていい牛になるが、生きていくのに助け合いが必要なのは人間も同じだよ」。